【簡単に解説】咳を強くする為の呼吸・咳嗽訓練| 嚥下リハビリ

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咳嗽と書いて「がいそう」と呼びます。つまり咳嗽とは咳の事です。気道に炎症が起きていたり、異物が気管に入った時や痰を吐き出そうとしたりする時に咳嗽が出やすくなります。ただ、咳をすると言う事は必ずしも悪い事だとは言い切れませんよね。咳をするから、食べ物が気管に入っても喀出して誤嚥性肺炎のリスクを下げることはできます。つまり力強い咳をする事で、誤嚥では無く喉頭侵入になるわけです。咳をする力の事を咳嗽力とも言い、誤嚥性肺炎予防の為に咳嗽力を強くする事は重要になります。今回は咳嗽力を強くする為の運動をまとめたいと思います。

では、咳はどの様にして出すのでしょうか?下の図の様に、息を吸い声帯を閉じる事によって胸腔内圧を上げ、そして声帯を一気に開放し腹圧をかける事によって力強い咳が生じます。

したがって強い咳をする為には、①しっかかり空気を吸える事(深い吸気)②声帯の機能が保たれている事(声帯の閉鎖)③腹筋などの息を吐く為の筋力が強い事(呼気筋による爆発的な呼出)が条件となります。順番に説明したいと思います。

空気をしっかり吸う事(肺活量)は力強い咳嗽力を行う為に必要になってきます。息を吸う時は筋肉の働きで肋骨を上に上げ,横隔膜を下に下げて胸の中の体積を大きくします。すると,空気が流入し肺がふくらんで空気を取り入れることができます。つまり胸椎 ・肋骨 および胸骨で囲われた部分である胸郭を広げ肺を膨らますというのが重要です。

肺の外側の胸郭の骨が固くなってしまうと胸郭自体が広がらないので、中にある肺も膨らみにくくなってしまいますよね。なので胸郭の柔軟性を促す事は重要になります。当然、肺自体も出来るだけ膨らまし柔軟性を保つ事も重要ですよね。胸郭の柔軟性を促す運動としてはシルベスター法や体幹回旋運動肺の柔軟性を保つ運動としては深呼吸による最大吸気をご紹介します。もっと効果的な方法として胸郭の柔軟性を保つ運動として呼吸介助手技、肺の柔軟性を保つ運動として、アンビューバック等を用いた最大強制吸気量練習もあります。

間接訓練 咳嗽力トレーニング/空気を吸える事

シルベスター法、体幹回旋運動

深呼吸(発声)、その他の練習・・

咳嗽をする時に息を吸い声帯を閉じる事で胸腔内圧を高める事ができます。これは風船に空気を入れるのと一緒ですね。風船の口もとをしっかり結ぶ事で空気が漏れずに風船を膨らませる事ができます。風船の口元が開いたままだと空気が漏れてしまい風船が膨らみませんよね。つまり風船の口もとの部分が声帯になるわけです。声帯がしっかり閉じる(内転)事が風船を膨らませるのと一緒で胸腔内圧を高め力強い咳嗽をする為には必要になってくるわけです。

声帯を閉じる(内転)運動はプッシングエクササイズやプリングエクササイズが有効だと考えられてます。力いっぱいものを持ち上げようとする際に肺から息が漏れない様に声帯は緊張(内転)して強く閉鎖しようとします。このような生理的機序を利用した運動です。壁や机などを押しながら上半身に力を入れて強く発声するのがプッシングエクササイズ、重いものを引き寄せながら発声するのがプリングエクササイズです。

間接訓練 咳嗽力トレーニング/声帯を閉じる運動

プッシングエクササイズ、プリングエクササイズ

せっかく胸腔内圧を高くしても腹圧が弱いと咳嗽も弱くなる可能性があります。

腹圧を高め力強い咳嗽を行う為に、外腹斜筋、腹直筋等の腹筋の筋力を高める事が有効だと示唆されているので紹介します。

間接訓練 咳嗽力トレーニング/腹筋を鍛える運動

腹直筋の運動、外腹斜筋の運動

上述した①~③とは別に呼気機能を全体的に高める運動としてブローイング訓練も効果的だと個人的には考えています。ティッシュや吹き戻し、ペットボトルなどを使用して運動する事で口輪筋や頬筋、腹筋群などの筋肉の活性化や胸郭や肺の広がりを促す事も期待できます。あとレクリエーションだとカラオケがお勧めです。

間接訓練 咳嗽力トレーニング/呼気

ブローイング訓練

誤嚥性肺炎予防の為に強い咳嗽ができる事は重要です。その為に①しっかかり空気を吸える事(深い吸気)②声帯の機能が保たれている事(声帯の閉鎖)③腹筋などの息を吐く為の筋力が強い事(呼気筋による爆発的な呼出)が重要です。もし咳を強くする運動を行うなら①、②、③の弱い所を個別的にアプローチしブローイング訓練等で全体的な呼気機能を高めるのが効果的だと思います。自宅での体操や施設での集団体操等でも是非試してみて下さい。

咳嗽(がいそう)とは、気道異物を喀出する防御反応であり、誤嚥性肺炎予防に不可欠です。

力強い咳(咳嗽力)を生み出すには、以下の3要素が必要です。

  1. 深い吸気(肺活量):胸郭の柔軟性を高めるシルベスター法深呼吸
  2. 声帯の閉鎖機能:胸腔内圧を高めるためのプッシング/プリングエクササイズ
  3. 爆発的な呼出筋力腹筋群(腹直筋・外腹斜筋)の強化。

これらの弱い部分を個別訓練で強化しつつ、ブローイング訓練などで呼気機能全体を底上げすることが、最も効果的なアプローチです。自宅や施設で継続できる訓練を導入し、利用者様の安全な嚥下をサポートしましょう。

【追伸】

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この記事を書いた人

作業療法士として20年間、患者様、利用者様のリハビリ業務を行う。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士。
病院・クリニック・訪問看護ステーションなど色々な施設で勤務。乳児、幼児の医療的ケアから発達障害児、精神疾患、医療度の高い神経難病や癌末期などの終末期と数々の患者様、利用者様に携わる。
現在は訪問看護ステーションに所属。
2025年9月には医療と福祉の為ホームページ制作会社 リハ-Webを起業。訪問リハビリの現場に所属しながら得意のWEBクリエイターとWEBマーケティングを生かしホームページやブログの制作も行う。
Xのフォロワーも1300人。医療と福祉の難しい内容を分かりやすく伝えることをモットーに記事を発信しています。

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